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〜日本企業とのビジネス促進に向けて〜
1990年から2000年の10年間、コロラド州は全米の中で最も成長を遂げた州である。ハイテク産業の成長がエンジンとなった。ニューエコノミー州、サイバーステートと称される所以である。一時期、シリコンバレーにあやかろうと「シリコン マウンテイン」と命名したが、デンバー商工会議所が中心になり、昨年「Convergence
Corridor(集積街道)」計画を発表した。同計画は、通信機器製造、コンピュータソフト開発、通信プロバイダー、バイオテクノロジーなどハイテク産業間の実質的な協力・補完関係の構築・支援を目指したものである。
お時間があれば、第1表を参照願いたい。過去10年間の7指標に関するコロラド州の経済パフォーマンスを示したもので、総合得点は全米1位の評価である。
| 第1表 コロラドの経済パフォーマンス(1990-2000年平均) |
| 項 目 |
成長率(%) |
全米順位 |
全米平均(%) |
| 一人当たりの賃金上昇率 |
5.3 |
1 |
4.2 |
| 個人所得増加率 |
8.1 |
2 |
5.5 |
| 賃金上昇率 |
8.8 |
2 |
5.8 |
| 州総生産増加率 |
9.5 |
3 |
6.3 |
| 人口増加率 |
2.7 |
3 |
1.2 |
| 雇用増加率 |
3.8 |
4 |
1.9 |
| 失業率 |
4.2 |
8(低い順) |
5.6 |
| 総合得点 |
|
1 |
|
| (出所:Colorado
Economic Perspective June 20, 2001) |
好調を続けたコロラド州経済も、2000年春のシリコンバレーに端を発したいわゆるドット・コム・バブル崩壊の影響を受け、2000年第4四半期頃からIT関連企業を中心にレイオフや倒産などが目立ちはじめ、2001年第2四半期には千人規模のレイオフが新聞をにぎわすなど厳しさを増した。これに対し、州政府は、技術に裏打ちされたハイテク企業の育成(ハイテク製造業の育成)をはじめ、バイオ産業や環境機器関連産業の発展など、バランスのとれた産業の促進を提唱している。先の「Convergence
Corridor」に加え、後述E-Government、連邦議会に選考されたデンバー市E-Commuteパイロット事業など、新時代に適応した経済構造つくりに果敢に挑戦している。
コロラドは歴史的に冷戦体制下の軍関連施設の拠点として成長、ゆえに通信関連、航空・宇宙産業をはじめとする高度な技術、人材が集積されている地域である。これに、交通の便利性、住環境の良さ等も加わって、過去10年間、シリコンバレー等からの移入が増え、人口は100万人増の430万人、ネバダ、アリゾナに次いで全米3位の伸びを示した。こうしたシリコンバレーの技術導入が地元の技術と交わりつつ、さらに高度化させるといったスパイラル的発展を遂げ、結果、政府、企業、消費者・利用者の間に導入のベースが出来上がったと見て、全米で初めてともいえるE-Government構想の大実験が今年から始まった。
ところで、米国のハイテクはシリコンバレーだと思っている日本企業は今なお多い。事実ではあるが、この10年間に及ぶ米国ハイテク産業の飛躍的発展と共に、ハイテク企業はコロラド、ネバダ、ジョージア、テキサス州等にも広がって行った。
コロラド州では、とりわけ、デンバー市を中心に、北はフォートコリンズ市(Fort Collins)、ボルダー市(Boulder)、南はコロラドスプリングス市(Colorado
Springs)に至る南北100マイル強、通称フロント・レインジ(Front Range)といわれる歴史的に軍関係の技術が集積している地域にハイテク企業の起業が相次いだ。この地域には、州人口約430万人のうち、90%が住んでいる。
本稿では、こうしたコロラド州の産業・経済、とりわけ日本政府も力を入れている、ハイテク産業を中心に、環境、バイオ産業についても多くの日本企業関係者にお伝えし、コロラド州とのビジネス促進にお役立ていただければ幸いと考える。
なお、本文に入る前に、コロラド州およびデンバー市の注目度について触れておきたい。ノースカロライナ州に本部があるAmerican
City Business Journalsは、経営者が米国のどこで商売したらよいか、と言った意思決定の参考に供すために、全米主要都市300カ所を上回る地域のビジネス環境情報を定期的に分析し、「Demographics
Daily」を発表している。
2001年第2四半期のデータ(過去12カ月の統計分析結果)によると、デンバーは所得、雇用状況等に関する企業経営環境として全米で第一、州ではコロラドが第一と評価された。企業にとってのビジネス環境は全米トップと位置付けられたのである。因みに、第2は、アイオア、オーステイン、ラーレイと続く。州では、コロラドに次いでマサチューセッツ、デラウエアー、ネバダ、ヴァージニアの順となっている。
ハイテク産業の地位
米国電子協会(American Electronics Association)が雇用数、賃金、住環境、ハイテク技術者数等の条件を総合し、ランク付けしたCyberstates2001によると、コロラドが全米トップクラスの成長をしたと報じている。ハイテク産業ではカリフォルニア州が断然トップであるが、同州との比較表を作成してみた(第2表)。
| 項 目 |
コロラド州 |
全米順位 |
カリフォルニア州 |
全米順位 |
| 企業数(社) |
6,383 |
12 |
31,923 |
1 |
雇用者数(人)
製造業関連(99年統計)
サービス関連(同上) |
180,866
49,940
116,677 |
10
11
9 |
973,555
439,030
433,444 |
1
1
1 |
ハイテク製品
輸出額(百万ドル)
州の総輸出額に占めるシェアー |
4,075
62% |
11 |
67,516
56% |
1 |
ベンチャ
キャピタル
投資額(百万ドル) |
4,685 |
5 |
42,485 |
1 |
1000人当たりのハイテク産業
労働者数 |
97.6人 |
1 |
76,66人 |
4 |
コンピュータ所有世帯
(全家庭に占める比率) |
63.1% |
4 |
56.7% |
11 |
全家庭におけるインターネット
アクセス比率(%) |
51.6 |
3 |
45.8 |
11 |
コロラドの地位は、項目により、全米1〜12位となっているが注目すべきは、過去5年間のコロラドの成長ぶりである。企業数の増加率は、全米第4位(102%増)、雇用者の増加率は同7位の72%増と他州に比べて極めて高い成長を示している。
ところで、米国経済停滞の影響を受け、ハイテク産業もレイオフを余儀なくされているが、一方で、Expanets(ニュージャージーを拠点とする通信サービス会社)やTelseon(カリフォルニアにある広帯域インターネット接続サービス会社)など本社を当地にシフトする企業による新たな雇用も生まれ、2001年5月時点の失業率は、2.8%と全米4位の低水準にある。Colorado
Software and Internet Associationの調査によれば、会員企業のうち、73%が今後とも雇用増を計画、とりわけ、技術者の雇用を希望している。レイオフの最中ではあるが、技術者不足は解消されておらず、このため、州知事は、昨年11月に人材養成学校Colorado
Institute of Technologyを創設した。
同州にベースを置く、代表的企業として、Qwest Communications International、Echostar
Communications、AT&T Liberty Media、Level 3 Communications、Time
Warner Telecom、Storage Technology、DII Group、J.D Edwards、Verioなどがある。最大手のQwest社は、今年2月、日本での通信事業に着手しようと日本のPNJコミュニケーションズの株式取得を発表。同社の初めてのアジア市場進出となった。
州外の企業ではあるが、同州での製造、R&Dをはじめとする本格的な取り組みを行っている企業も多い。AT&T、Worldcom、Lucent
Technologies、Lockheed Martine、Avaya、Sprint等である。コロラド州でこのようにケーブル・テレビ(CTV)、通信、コミュニケーション産業が比較的多いのは山岳地帯ゆえに短波長のテレビシグナルを受信することが出来なかったことから、他州に先駆けてCTV技術を開発する歴史的必要性があったためである。また、通信科学分野の専門教育を受けた技術者が多く住んでいたこともコロラド、デンバーがCTV産業の技術的中枢センターとして発展することに貢献したといえる。
コロラド州政府は、今年10月にハイテクミッションを日本に派遣し、東京、大阪における商談等を計画しており、日本企業との交流を強く期待している。
E-Government(電子政府)計画
電子政府構想は、Electronic Signature in Global and National Commerce
Actとして、クリントン政権時代に議会の了承を得、州政府レベルで導入の可否を検討中の案件である。民主党が反対しているが、その主な理由は、コストがかかりすぎるといった批判やプライバシの侵害などである。これに対し、共和党は熱心でブッシュ大統領選出州のテキサスとコロラド(共和党知事)が他州に先駆けアクションプランを打ち出した。
ビル・オーエンズ知事は、新世紀コロラド(New Century Colorado)と銘打ち、コロラドが技術の分野で最先端にあるとの認識のもと、デジタル時代に向けた政府に変革することが重要だと指摘、電子政府は同変革計画の第一歩と位置付けている。
共和党政権になって、政府関連予算の削減が現実化しているが、電子政府は消費者へのサービス向上とコスト削減による効果的かつ効率的政府の実現のためのキーファクターでもある、と指摘する。
電子政府は高度に発達した既存の通信インフラや技術を活用するもので、当初計画で少なくとも5,000万ドルの経費カット効果を期待している。ところで、本構想は現在もなおpendingの部分があり、全容は明らかでないが、当面、次の事務手続きから徐々に電子化していく計画である。
運転免許証、不動産免許、狩猟免許等の更新、自動車登録申請、州公園の入場パス、結婚・離婚、誕生関連の証明書、所得税など税金関連申請、政府調達入札等。
表2によると、コロラドでは家庭におけるコンピュータ普及率やインターネット接続率は、全米で上位にあるとはいえ、60%程度である。このため、個人的なアクセスがなくても支障のないよう別の方法を検討している。例えば、州政府サービスセンター、サービス端末(Service
Terminals)、電話からのアクセス等である。
E-Commute
2001年6月1日、デンバー市はE-Commuteパイロット計画を開始した。同計画は米国議会のイニシアテイブによる2年間プロジェクトで、全米5大都市が選考された。デンバー、ヒューストン、フィラデルフィア、ロサンゼルス、ワシントンDCである。
目的は、企業がteleworking(telecommuting)を導入することにより、車での通勤を減らし、朝夕の交通渋滞の緩和、排気ガス量の削減を図るものである。この実験によるデータが将来の全米ベースでの実行の可否に影響を及ぼすだけに、重要なパイロットである。
関係者によると、これにより10万人あたり年間2,613トンの排気ガスの削減が可能と推定している。
将来の計画では、多くの企業が参加し効果あらしめるため、インセンテイブとして企業がE-Commuteによって削減した排気ガス量にクレジットを与え、その分、税金控除として相殺するなど検討している。Teleworkingは多くの従業員が週1〜2回程度の自宅勤務(一方でフルタイム自宅勤務の従業員も何人か確保する)をし、排気ガス量の削減と同時に生産性やモラールの向上、間接経費のカットなども期待できるという。主に、IT関連の企業がteleworkingに向いているといわれており、サイバーステートの名をもつコロラド(デンバー)はまさに適地といえよう。
WorldPortの動き
デンバー国際空港は1995年開港以来、ユナイテッドのハブ空港として順調に客足を伸ばし、2000年の乗降客は3,900万人に迫る勢いで、世界で11位、全米6位の空港に成長した。一方、貨物量は世界で36位、全米で15位と旅客に比べ振るわない。第2表にある通り、コロラド州総輸出額のうち、62%が付加価値の高いハイテク関連製品であること、さらに今後のハイテク産業の成長を考え合わせると、航空貨物の潜在需要は極めて高い。また、コロラドのみではなく、最近、ハイテク産業の成長が著しいネバダ、ユタといったロッキーマウンテイン地域の貨物、アトランタ、テキサスなどの中継ハブとしての役割も考えると、航空貨物量の伸びは高い。
このため、現在、5つの航空貨物ビル(32万5,000 spf)があるが、新たに約77万spfの広さを持つ施設WorldPortを建設中である。同施設は、保税貿易地域FTZであり、簡単な組立や製造などが免税で可能といったメリットをもつ他、いろいろな便宜供与にも気を配っている。日本からの旅客直行便はないが、貨物便の就航を日本の航空会社に働きかけていく方針である。
バイオメデイカル
D&B Marketplaceによると、バイオメデイカル関連企業数は全米で14,300社、就労者数は約72万人、過去10年間の年平均成長率は、3%強と全産業の2.5%を上回る伸びを示している。
コロラドの同産業はボルダー市に集中しており、企業総数はおよそ225社、就業者数は約1万人で、全米17位にランクされている。
同産業に分類される主要製品は、診断・治療医療、製薬および医療製品・サービスで、コロラドではone generationといわれる比較的新しい企業が多い。コロラド高度技術協会(Colorado
Advanced Technology Institute)によると、同産業の成長を支えたのは、しっかりした医療機器産業や世界的に有数な研究施設の存在、大学などとの強力なネットワーク関係、ベンチャキャピタルからの資金供与など理想的なビジネス環境があったからと指摘している。今年の4月、Fitzsimonsにある軍基地跡地にバイオテクノロジー研究センター(民間企業に対するインキュベーター)施設も完成した。
遠隔診療や医療データの保存、外来患者サービス向上などのニーズの高まりは、ハイテク技術導入を必要とする。コロラドに集積したハイテク技術との融合はバイオメデイカル産業の技術も高める結果となり、一層の成長が期待されている。
環境機器産業
ジェトロの調査によると、コロラド州の環境関連企業数は約2,300社、従業員数は15,000人で、コンサルテイング関連企業が全体の約50%を占め、製造業は25%程度となっている。同州には、国際的エンジニアリング会社CH2M
Hillをはじめ、Black & Veatch、 Rust Environmental、Morrison & Knudsen、Parsons
Engineering & Scienceなどの大手企業が営業しているが、従業員9名以下の小規模企業が全体の50%、50名以下が同32%を占めている。こうした大小の企業活動を支えるバックボーンとなる研究機関が数多く存在していることもコロラドの特長である。国立再生可能エネルギー研究所、国立大気研究センターなどの連邦政府研究所、コロラド大学、鉱業大学等大学の研究所なども多く、環境技術、情報、規制、国際法などを専門とするカリキュラム、研究セミナーなども盛んで、産官学一体となった技術開発も行われるなど、企業にとって整った環境下にある。
環境産業の中心は水、土壌、大気汚染防止関係である。その背景は、同州が採鉱、採油産業で発展してきたこと、デンバー市が海抜1マイル(1.6km)にあり、乾燥気候に加え山岳地域特有の昼夜の気温差による自動車の排気ガスのよどみ、降雪時の砂まきによる浮遊粉塵など大気汚染が問題となっていたためである。日本で秋に開催されるEnvironment
2001展示会にもコロラドから水処理関係企業が参加する。
また、ジェトロが実施している地域間産業交流事業(通称:ローカル・ツー・ローカル事業)にて、コロラドで取り組んでいる環境との共生住宅(ビルトグリーン住宅)の導入を山形ビルトグリーン協会(NPO)が開始するなど、日本との取引も具体化し始めている。
対日貿易関係
マサチューセッツ・インステイチュート・フォー・ソーシアル・アンド・エコノミック・リサーチ(MISER)によると、コロラドの2000年対日輸出額は8億9,200万ドルで全米総輸出額の1%強に過ぎないが、同州にとってはカナダに次ぐ第2位の重要な輸出相手国である。主要輸出製品は盛んなハイテク産業を反映して、コンピュータおよび電子関連製品で全体の50%を上回っている。また、農産品のシェアーも高くハイテク製品に次いで18%と第2位の輸出品目となっている。ハイテク輸出製品の代表的なものとして、Storage
Technology社、Hewlett Packard社、Atmel社、IBMなどの自動データ処理(ADP)記憶装置、同関連部品、また、Eastman
Kodak社のレントゲン写真フィルムなどをあげることができる。
日本企業関連情報
ジェトロの調査によると、2001年7月現在の日本企業数は69社、うち商社・販売業務等サービス業が31社、生産業務が15社、研究開発関連7社、運輸6社、不動産2社、エネルギー資源1社、その他7社である。新たに進出する企業、撤退する企業もあるため、企業数に関してはこの数年大きな変動はないが、NTTが世界で最大級のインターネット・ソリューション・プロバイダーVerio社(本社デンバー)を2000年に買収したことは関係者の耳目を集めると共に、IT分野における日本企業への期待も高まってきている。
コロラド日本企業懇話会(Japanese
Firms Association of Colorado)
デンバー首都圏に事務所を持つ日本企業によって、会員相互の親睦、扶助、日本語補習学校の運営および地域社会への貢献を目的として、コロラド日本企業懇話会が1981年に設立された。現在、24社の日系企業および個人会員等から構成されており、スポーツ活動、新年会等を通じて各企業社員とその家族に親睦の機会を提供している。日頃お世話になっている現地校教師を各国から日本に2週間程度招待するジェトロのプログラムには、日本企業懇話会も参加している。2001年まで10名の教師をコロラドから派遣している。また、コロラド日米協会とともに進めている「日米会」の活動は、日米企業文化の違いを互いに知り合う場として好評を博している。さらに、地元の高校生を対象に日米間の輸出入業務を学ぶメンターンシップ・プログラムも日米交流の底辺拡大に役立っている。
在デンヴァー日本国総領事館
米国中西部4州(コロラド、ユタ、ニューメキシコ、ワイオミング)を管轄する唯一の政府(外務省)機関で、主要業務としては管内諸情勢(政治、経済、社会)の把握とともに、文化交流及び旅券発行等領事業務。全米17日本総領事館の中では一番新しく、1999年1月開設、デンヴァー市ダウンタウンに位置する。
コロラド企業との取引の勧め
上述したようにコロラド州は、ハイテク産業や恵まれた研究機関、人材の集積をベースに、電子政府をはじめとする新しい社会、経済インフラストラクチャーの構築に挑戦している。それは、今まで誰も行ってこなかった、まさに21世紀の体制作りに向けた大きな実験でもある。
日本の企業も是非この挑戦に加わり、体験を積み、世界企業に成長して活躍いただきたいと思う。当地には、ベンチャーキャピタルも多い。日本に比べ、起業も盛んであり、経験も豊富である。経験に裏打ちされたコロラド企業と一緒に新たな電子社会、環境技術・サービス開発、バイオ技術の製品化を成し遂げていただきたいと思う。
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